1日1回の深呼吸でキレイに。医師が教える「美人の習慣・思考法」

2025.04.23

シワやシミが増えた気がして落ち込んだり、数キロの体重増減に一喜一憂したり。キレイになりたいけれど、ゴールの見えない毎日に疲れてしまっている人もいるのでは？

今回、迷えるオトナ女子たちに「美人の習慣・思考法」を教えてくれたのは、整形外科医師の長田夏哉先生。「『いくつになっても変わらないね』と言われる人は、ある共通点があるんです（長田先生）」……えっ、それって何なんですか、先生?! 内面からにじみ出るような健康美を手に入れる方法について、整体サロンwarm forest店主の井立田祐樹が聞いてきました。

監修者紹介

長田夏哉（おさだ・なつや）先生

田園調布長田整形外科院長。1969年山梨県生まれ。日本医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科教室に入局し、専門医として研鑽を積む。2005年、東京都大田区田園調布に、田園調布長田整形外科を開院。「患者さんを全体的に整える」トータルヘルスケアを掲げて、身体各部の不具合にアプローチする多くの選択肢を提示、個人個人に合う治療法・健康法を提供している。『人生が変わる不思議な診察室』（サンマーク出版）、『中指を回すとすべての痛みが消える』（マキノ出版）、『体の不調は「脳疲労」が原因だった』（青春出版社）他、著書多数。

聞き手紹介

井立田祐樹（いたつだ・ゆうき）

整体師・整体サロンwarm forest店主。1985年埼玉県川口市生まれ。愛歯技工専門学校で学び、歯科技工士と介護福祉士の資格を取得する。卒業後は歯科技工士として2社に勤務するも、身体のしくみや健康への関心から2018年に整体師へと転身。埼玉県に本店を置く整体院で施術経験を積む。2024年12月、お客さま1人ひとりとより深く向き合う接客・施術を目指して独立。2025年1月に東京・代官山の整体サロンwarm forestを開店し、現在まで代表をつとめる。

今の社会は「美しくいるのが難しい」環境

――美しくありたいと思う女性は多いですが、そもそも「美しさ」とは何でしょうか？

人間の脳には、変化を嫌い一定を求める性質があります。健康かどうかを血圧や血糖値といった数値で測ろうとするのは、脳＝頭でものを判断している姿勢です。

でも、身体は日々変化していますよね。ある日はむくみがなくて顔が引き締まっていると思うと、つぎの日はむくみどころか顔色まで悪かったりする。周辺の環境に適応するために、常に揺らいでいるのが身体なんです。心身がその揺らぎに順応できる状態が「健康」であり「美しい」ということだと、私は考えています。健康とは本来、血圧や血糖値といった数値で測れるものではないんです。

大昔に比べると、わたしたちの生活はずいぶん便利になりました。暑いときや寒いときはエアコンをつければいいし、疲れて歩くのが億劫なときは自動車に乗ればいい。でも、そうやって便利さを追い求めてきたことで、揺らぎへの順応力を失ってきたという側面もあるのではないでしょうか。昔の人なら順応できた気温でも熱中症になってしまったり、ちょっとした寒暖差で体調を崩してしまったりする方が増えているように感じています。

便利な生活をどこまでも追い求めた結果、健康や美しさを失ってしまう。失われた健康や美しさを取り戻そうと、病院や美容サロンに駆け込んだり、健康食品や美容器具を買ったりする。自分でまいた種を必死に回収したのに、懲りずにまた種をまいているのが人間です。そう思うと、ちょっと滑稽ですよね。

――健康的な美しさを保つには、多少不便な生活のほうがよかったのですね。

そうかもしれません。でも、わたしたちはもう原始時代に戻ることはできませんよね。そんな中で大切なのは、日々揺らいでいる身体の声に耳を傾けることです。便利さや効率を追い求める現代社会において、わたしたちは日々起こる出来事を脳で判断するクセがついてしまっています。むくみもだるさも顔色の悪さも、身体からのSOSなんです。

でもわたしたちは「だるいけど今日は仕事が忙しいから休めない」と脳の判断を優先して動いてしまいます。その結果、身体からのSOSはいつまでも放置され、さらに順応力を失っていくという悪循環に陥っている方が多いように感じます。

お腹が空いて泣いている赤ちゃんに、「泣かないで」と怒るだけのお母さんはまずいませんよね。ミルクをあげてなだめるはずです。身体に対しても同じように「脚がむくんでいるよ」というSOSがあれば、その根本の原因を探ってあげないといけません。それをしないでただただ対症的な処置だけを施していても、いつまでもSOSはやまない（むくみは解消しない）ままになってしまいます。

「身体の声に耳を傾ける」ことが健康美の秘訣

――現代社会で暮らしながらも健康美を保つには、どうすればいいのでしょうか？

現代社会に生きるわたしたちは、意識的に身体感覚を取り戻すことが必要です。自然の中に入って揺らぎを感じることは、その手軽な手段になるでしょう。わたしも年に1回は登山をして自然の中に身を投じ、揺らぎの中に身体を置くことを習慣にしています。

全身で自然を感じると、自分の身体と周りの環境との境界線がわからなくなるくらいの融合感を感じます。この感覚は、山から降りて日常生活に戻っても持ち続けることができます。そうすると、無意識のうちに脳と身体とがフィットするようになる。揺らぎに直面する身体からのSOSを放置せず、うまく付き合っていけるようになるんです。

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身体が不調のサインを出しているとき、すぐに会社を休むことができなくても、食事やマッサージ、ケア製品で自分で不調を一時的にケアすることができる。お気に入りの化粧品やお友だちとの会話で、メンタルのバランスを整えたりできる。そうして時間ができたときにゆっくりと休養し、医療機関で治療を受けたりもする。こうした柔軟な対処をすることが、根本的な健康法・美容法だと思います。

――自然の中に身を置く機会をなかなか作れない場合、いい対処法はありますか？

深呼吸もいいですよ。お腹から空気を吸って深呼吸をすると、自然の揺らぎの感覚を取り戻すのに役立ちます。身体からのメッセージもしっかりと受け取れるようになるでしょう。こうした自分なりの身体感覚を取り戻す時間を、定期的に設けることが大切です。

1週間、1か月、1年と時間がたつほどに、身体からのメッセージはたまっていってしまいます。たとえば家に帰ったら毎晩深呼吸をする習慣をつけておけば、1日1回は身体の声に耳を傾ける時間がとれます。そうやって、自分で自分を健康美へと導くことが大切です。

「〇〇すればキレイになれる」という絶対の美容法はない

――「いくつになっても美しい人」には、どのような共通点がありますか？

わたしの思う美しさとは、身体の中からにじみ出してくるようなその人らしい美しさです。そういう自然な美しさって、やっぱり食生活や運動習慣、もっと言えば健康かどうかというところから来ていると思っています。

生命のエネルギーの流れと身体がフィットしている人とでも言いましょうか。そういう人は20歳のときは20歳らしい美しさだし、30歳になっても40歳、50歳になってもその年齢にふさわしい美しさを備えている気がします。

40歳なのに20歳の美しさを追い求めるのはその流れに逆らっているし、精神的にも苦しくなっていくだけ。川があって、川上から川下に向けてよどみなく水が流れ、その周りに木々や草花、生きものがいる。そんな自然な美しさを目指してほしいと思います。

――自分らしい美しさを目指してがんばる女性たちにメッセージをお願いします。

自分らしい美しさを磨くための一番の美容法は、自分の身体が求めているモノ・コトを、適切なタイミングで補給することです。「〇〇を食べれば健康になる」「〇〇をすればキレイになれる」なんて、全部ウソですよ。なぜなら、何を食べて何をすれば健康になるかは、その人の体質やそのときの体調によるからです。

自分らしく美しくなるには、まず自分の身体の声に耳を傾け、自分を理解するところから。ある意味健康美を保つのが難しい現代社会で、それでも美しくいたいなら、便利さと身体に折り合いをつけてほしい。わたしはそう願っています。