飲み会の次の日、なんだかパンプスがキツい。デスクワーク続きで脚が重い……日常生活にはむくみの原因がたくさん。これでは美脚にはなれないとあきらめていませんか?
今回、迷えるオトナ女子たちに脚のむくみケア法を教えてくれたのは、整形外科医師の長田 夏哉先生。「むくみ改善の鍵は根本対策+対症ケアの合わせ技なんですよ(長田先生)」……そのケア、今すぐ知りたいっ! むくみレスの健康的な美脚を保つ方法について、整体サロンwarm forest店主の井立田 祐樹が聞いてきました。
監修者紹介

長田 夏哉(おさだ・なつや)先生
田園調布長田整形外科院長。1969年山梨県生まれ。日本医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科教室に入局し、専門医として研鑽を積む。2005年、東京都大田区田園調布に、田園調布長田整形外科を開院。「患者さんを全体的に整える」トータルヘルスケアを掲げて、身体各部の不具合にアプローチする多くの選択肢を提示、個人個人に合う治療法・健康法を提供している。『人生が変わる不思議な診察室』(サンマーク出版)、『中指を回すとすべての痛みが消える』(マキノ出版)、『体の不調は「脳疲労」が原因だった』(青春出版社)他、著書多数。
聞き手紹介

井立田 祐樹(いたつだ・ゆうき)
整体師・整体サロンwarm forest店主。1985年埼玉県川口市生まれ。愛歯技工専門学校で学び、歯科技工士と介護福祉士の資格を取得する。卒業後は歯科技工士として2社に勤務するも、身体のしくみや健康への関心から2018年に整体師へと転身。埼玉県に本店を置く整体院で施術経験を積む。2024年12月、お客さま1人ひとりとより深く向き合う接客・施術を目指して独立。2025年1月に東京・代官山の整体サロンwarm forestを開店し、現在まで代表をつとめる。
むくみは「細胞の間に水がたまりすぎている」状態
――そもそも、むくみって何ですか?
人間の身体には血液の巡りやリンパの巡りなどの「巡り」があります。むくみはこうした巡りのひとつの滞りのあらわれです。心臓から血液が送られて全身にわたり、酸素と栄養素を送ったあとで、今度は二酸化炭素と老廃物を受け取って戻す。こうしたサイクルが巡りの滞りによってうまく回らなくなったときに、そのひとつのあらわれとしてむくみが起きるのです。
もう少し詳しく説明すると、むくみとは細胞のすき間にある水分が過多になっている状態です。人間の身体の約60%は水分ですが、そのうち3分の2が細胞の中に、3分の1が血管など細胞以外の場所にあります。細胞以外の場所にある水分には、細胞のすき間にたまる液(細胞間質液)があります。
これは血管やリンパ管にあいた小さな穴からしみ出してきた水分で、血管の内外を行き来しながら血管の中の酸素や栄養分を細胞に届けたり、老廃物を血管に運んだりしています。
このとき血管やリンパ管からしみ出す水分の量が多い、もしくは吸収される水分の量が少ないと、細胞のすき間にある水分量が過多になってむくみとなります。こうした水分量の不均衡の原因は、血液やリンパの巡りの悪さにあることが多いです。
――全身のなかでも、脚のむくみに悩む方が多い気がします。これはなぜですか?
脚のむくみが起きやすいのは、下半身から二酸化炭素や老廃物を心臓に戻すには、重力に逆らう必要があるからです。心臓からの物理的な距離が遠いこともむくみやすさに関係しているでしょう。
代表的なのは、夕方になると脚が重だるくなる、靴下のゴムの部分が張る感じがする、靴がキツく感じるといった自覚症状です。靴下の跡がくっきりとついているというのも、わかりやすいサインです。
女性が男性よりもむくみやすいのはなぜ?
――むくみの原因にはどんなものがありますか?
一番多いのは、脚の筋ポンプ機能の衰えです。特にふくらはぎの筋力が低下していると重力に逆らうためのポンプ機能がはたらかず、むくみとなってあらわれます。女性は男性に比べて筋肉が少ないため、筋力の低下によるむくみが出やすい傾向にあります。
これは脚のむくみに限りませんが、生活習慣もむくみの原因になります。食生活では、塩分が多い食事やアルコールをよく摂る方は、むくみやすい傾向にあります。
女性のみなさんに特に気をつけてほしいのは、水分の過剰摂取です。水を飲むことはたしかに美容や健康によいのですが、飲めば飲むほど効果があるわけではありません。たとえば日頃からあまり運動しない人が水を過剰に飲むと供給>排出になってしまい、残った水分がむくみになります。水を飲むときは適量を心がけましょう。

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――食べたり飲んだりしたものをしっかり排出することが大切なんですね。
おっしゃる通りです。そのためにも、血液やリンパ液の巡りが大事になってくるわけです。その点では、自律神経系のバランスが乱れていると血流が悪くなり、むくみやすくなりますね。
今は室内ではエアコンで温度調整されていることが多く、自律神経のスイッチが切り替わりづらくなっています。その結果、全身の巡りが悪くなり、むくみが起きてしまうこともあるでしょう。

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忙しさから来る睡眠不足や運動不足、デスクワークで同じ姿勢を長く続けることも、むくみの原因になります。女性は妊娠や生理などによるホルモンバランスの変化がむくみを引き起こすこともあります。特に生理前や妊娠中に分泌量が増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)には身体に水分をためやすくするはたらきがあり、これがむくみにつながります。
むくみ対策は「根本対策+対症的なケア」がお勧め
――脚のむくみにはどのような対策が有効ですか?
根本的な対策は、「運動」と「生活習慣の改善」、そして「自律神経系の改善」の3つです。
運動
ストレッチや軽いウォーキングなどの全身運動は、全身の血流を促して巡りをよくしてくれます。足首をグルグルと回すのもいいですね。
筋ポンプ機能の強化という意味では、かかと上げ運動や階段の昇り降りがお勧めです。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれるほど全身の巡りに大きな影響を及ぼしますので、ふくらはぎの筋肉を鍛えることはむくみの改善にも効果的なんですよ。
生活習慣の改善
食生活では、栄養バランスの取れた食事を規則正しく摂るように心がけましょう。塩分の多いスナック類やカップラーメンなどは、間食でも避けるのが無難です。その上で余分な水分を排出するカリウムや、血流を促すビタミンEを積極的に摂ると、むくみの改善に役立ちます。
カリウムはバナナやりんご、キウイといった果物のほか、ひじきや昆布などの海藻類、ほうれん草やじゃがいもなどの野菜にも多く含まれています。また、ビタミンEはアーモンドやピーナッツ、ごまなどの木の実やかぼちゃなどの野菜、いわしや卵などに豊富です。いずれもスーパーで簡単に手に入る食材ですので、ふだんの食生活にぜひ取り入れてみてください。
睡眠時間の確保をはじめ、十分な休息を取ることも大切なむくみ対策です。横になると重力で下半身にたまった水分を巡らせることができるうえ、内臓にも血液が行きわたり、余分な水分を尿として排出してくれる腎臓のはたらきが活発になります。その結果、むくみも軽減します。
自律神経系の改善
巡りをよくするには、交感神経優位よりも副交感神経優位の状態のほうが望ましいです。日頃から深い呼吸ができているほうが自律神経系のスイッチが切り替わりやすくなりますし、結果的にそれがむくみの改善にもつながります。
こうした根本的な対策に加えて、対症的なケアも行うとよいでしょう。
マッサージ
足首からひざ、そけい部にかけてやさしくマッサージをするのもお勧めです。リンパの巡りや血液の循環がうながされ、むくみの原因になっている滞りの解消に役立ちます。さらにふくらはぎにある腓腹筋やヒラメ筋をストレッチや指圧でほぐすことで、血液の巡りを良くすることができます。
弾性ストッキングの活用
ドラッグストアなどで買える弾性ストッキングも、一過性のむくみへの即効性があります。弾性ストッキングの圧力によってふくらはぎの血管が収縮し、足元から心臓へのポンプ機能を補助してくれるからです。
常に履いているとかえって血流を妨げてしまうこともありますので、寝るときだけ、特にむくみがひどいときだけというようにタイミングを決めて使うのが安心です。
寝るときに脚を高くする
下半身にあたる部分のふとんの下に座布団などを敷いて、脚を少し高くして寝てみましょう。重力で滞っていた足元から心臓への巡りを改善できます。あまり高くしすぎると眠りをさまたげる原因になりますので、横になった状態で痛みや違和感がない程度の高さを目安にしてください。
むくみを根本的に解消するには、身体機能を改善する必要があります。でも、現代社会で生活していればそれがなかなか難しい。そんなとき、身体機能が改善するまでのサポートとして、マッサージや弾性ストッキングを活用するというイメージがいいと思います。
病気が隠れた「怖いむくみ」のサインって?
――脚のむくみには大きな病気が隠れていることもあると聞きました。
そうなんです。むくみの多くは一過性のものですが、なかには病的なものもあります。心臓や肝臓、腎臓などの疾病によって巡りが滞り、むくみとなってあらわれている場合もあるのです。
こうした病的なむくみのサインは、マッサージや生活習慣の見直しに取り組んでもなかなか症状が改善しないことです。全身のだるさや倦怠感があったり、静脈瘤ができていたり、片脚だけがパンパンにむくんでいたりすると、病的なむくみの可能性が高まります。
夕方にひどくなりやすい一過性のむくみに対して、むくみが一日中続いているのも危険な兆候です。「何をしてもむくみが引かない」というときはたかがむくみと思わず、早めに医療機関を受診してくださいね。
店主・井立田 祐樹の取材メモ
「むくみを繰り返している」というお悩みは、warm forestのお客さまからもよくお聞きします。それは、むくみの根本にある脚の筋肉の衰えや自律神経系の乱れを解消していないからだと知りました。むくみレスの美脚は一日にしてならず。マッサージや指圧でのケアに加えて、運動や生活習慣の改善もコツコツ続けるのがよさそうですね。
文 大住 奈保子/撮影 海老澤 芳辰/デザイン 株式会社Tokyo Edit/監修協力 株式会社ベビーカレンダー